【レビュー】Cleopatra by The Lumineers

今回のアルバムレビューはThe Lumineersが2016年にリリースした2ndアルバムCleopatraをご紹介します。

アルバム概要

アーティスト:The Lumineers
アルバム名:Cleopatra
リリース:4/8/2016
トラックリスト:
Sleep on the Floor
Ophelia
Cleopatra
Gun Song
Angela
In the Light
Gale Song
Long Way from Home
Sick in the Head
My Eyes
Patience




Opheliaになぞらえたのは愛した女性か、それとも…

アメリカのインディーロック・フォークバンドThe Lumineersが2016年にリリースしたCleopatra。

このアルバムからはOphelia、Cleopatra、Angelaという女性の名前の曲たちがシングルカットされていますが、タイトルからも想像できる通り男女の人間関係を叙情的に歌っています。

The Lumineersの音楽はフォーク音楽に少しポップ要素を追加した、どちらかというと地味な印象を受けるものですが、歌詞の内容を読んでいると実は曲調と歌詞が見事にマッチしてなんとも言えない切なさを届けてくれていることに気付きます。

1stシングルとして公開されたOpheliaですが、私は初めて歌詞を読んだとき、その中の一節「I got a new girlfriend here Feels like he’s on top」というフレーズから、語り手は以前付き合いのあったOpheliaという女性について歌っており、彼女はもう彼と一緒にいないのだと受け取りました。

語り手はそのOpheliaとの離別のことを冷静に振り返り、苦い思い出でありながらも肯定的に捉えているように感じられます。

「Honey I love you, that’s all she wrote」という一説からも、Opheliaとの付き合いの中には語り手が満たされる瞬間があり、それに感謝する気持ちがあったことが読み取れます。

以上が私の解釈ですが、このタイトルは実際の女性を表しているのではなく、この歌詞の語り手が時を共に過ごした「地位や名声」を人になぞらえてOpheliaと呼んでいるという捉え方もされています。

Opheliaを語り手が時を共に過ごした「地位や名声」に置き換えても、名声を得て満たされていた自分、名声を失っても前向きに歩いている語り手の姿が思い浮かびます。

このように歌詞に解釈の余地を残しているため、他の方の解釈を読んでみたり、自分なりにストーリーを作り上げたりできますが、これこそがThe Lumineersの魅力だと思っています。

 

かつての自分をクレオパトラと歌う女性の悲しい物語


アルバムのタイトルトラックでもあるCleopatraも非常に興味深い内容の歌詞となっています。

このCleopatraについてはバンド側の公式見解が出ているようですので引用しますが、とある実話をもとにしているようです。

この物語の主人公は女性のタクシードライバー。
彼女は若い頃恋人がおり、結婚を考えるほどの仲だったようですが、彼女の父が亡くなったばかりで恋人からの(おそらくプロポーズの)言葉に返答をしませんでした。
傷ついた恋人は街を出てしまい、それきり戻ってはきませんでした。
彼女にとって彼は最愛の人であり、彼女は彼が出て行く際に残した床の足跡を洗い流せないまま時を過ごすことになります。

    • It’s inspired by a true story about a female taxi driver who, when was younger, was proposed to. But her father had just passed away, so she didn’t give her boyfriend an answer. So he left the village broken-hearted and rejected, and never returned again. He was her great love and she wouldn’t wash the footprints off the floor after he left.
        — The Lumineer

この恋人を失った女性が、若い頃の自分を振り返る際にCleopatraという言葉を使っています。

かつて恋人と仲睦まじかった自分を華やかさの象徴であるクレオパトラに見立て、全て手遅れだったと自責の念を抱いている今の自分と対比しているかのようです。

 

Angelaは何を考え、何を見出したのか


OpheliaやCleopatra同様に女性の名前が付けられたこのAngelaですが、この歌詞ではAngelaという女性が何かしがらみから逃げようとする姿が描かれています。

この歌詞に出てくる「私」はAngelaの恋人なのか定かではないですが、PVの女性の左薬指にリングが見えますので、おそらく夫の目線でこの歌詞は語られているのでしょう。

大きく膨らんだ彼女のお腹は新たな命の誕生、つまりは幸せを予感させますが、彼女は何かを振り払うようにハイウェイを進みます。

まるで隠れ家のような小さなホテルで彼女は一体何を考え、最終的にどう自分を納得させ帰路についたのでしょうか。

はっきりと語られていない部分は聞き手が補完するしかないですが、その聞き手の解釈の余地のバランスが絶妙で素晴らしいです。




素晴らしい歌詞が素晴らしいメロディと出会いThe Lumineersとなる

ここまで彼らの歌詞の素晴らしさについてふれましたが、実はそのメロディも味わい深く、何度聞いても飽きが来ません。

実際、アメリカのラジオではOpheliaのリリース以降The Lumineersの楽曲がラジオでヘビーローテーションされていますが、リリースされて1年以上経つにもかかわらず、今でも心地よくこの耳に響いてくれます。

歌詞の良さだけではダメで、かといって良質なメロディだけでも不十分。
The Lumineersを彼らたらしめているのは、どこか懐かしさを感じるメロディに叙情的な歌詞が乗ることで生まれる絶妙な化学反応なのでしょう。

本作が気になった方はぜひアルバムを通して聞いてみてください。
その優しいメロディと切なさを含んだ歌詞がじんわりと胸に染み込んで心地いいはずです。

↓アルバムはこちらのリンクからチェックいただけます。

 

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