【レビュー】Luciferian Towers by Godspeed You! Black Emperor

今回はGodspeed You! Black Emperor(GY!BE)の2017年作品Luciferian Towersをご紹介します。

アルバム概要

アーティスト:Godspeed You! Black Emperor
アルバム名:Luciferian Towers
リリース:9/22/2017
トラックリスト
Undoing a Luciferian Towers
Bosses Hang, Pt. I
Bosses Hang, Pt. II
Bosses Hang, Pt. III
Fam/Famine
Anthem for No State, Pt. I
Anthem for No State, Pt. II
Anthem for No State, Pt. III




GY!BEの怒りの咆哮は2017年になっても鳴り止まず

Godspeed You! Black Emperorというカナダ発のバンドは、1997年のデビューから社会に対する怒りを音という形で世の中に提示してきました。

2017年でデビューから20年の歳月が流れましたが、その中でGY!BEの怒りは沈静化されることなくむしろその熱量を加速させており、今作Luciferian Towersでも現代の社会に対する憤り-Trump政権やBrexitなど社会不安は相変わらず尽きませんよね-を音楽へぶつけています。

Luciferian Towersはいくつかのパートから成り立っていますが、いずれもギターのドローンサウンド(同じ音を長い間響かせる手法で、民族音楽などで多様される)をベースに、ストリングスやパーカッションが抑揚をつけながらドラマを紡いでいきます。しかしながら、似たような音使いや曲構成になっているわけではなく、異なるストーリーが描かれていることを耳で感じ取れますので、退屈することなくアルバムを聞き終えることができます。

 

それぞれの楽曲に対するバンド側のコメントは以下のようになっています。直訳すると少し意味が通らない箇所もありますが、そこに込められた反抗の意図をひしひしと感じられます。

    UNDOING A LUCIFERIAN TOWERS – look at that fucking skyline! big lazy money writ in dull marble obelisks! imagine all those buildings much later on, hollowed out and stripped bare of wires and glass, listen- the wind is whistling through all 3,000 of its burning window-holes!
    あの高層ビル群を見てみろ、汚らわしい金銭がつぎ込まれた姿を。そして想像してみるんだ、遠い将来には人影も窓ガラスもなくなり、そこを吹き抜ける風が音を立てるんだ、3,000もの窓を吹き抜ける風たちが。
    BOSSES HANG – labor, alienated from the wealth it creates, so that holy cow, most of us live precariously! kicking at it, but barely hanging on! also – the proud illuminations of our shortened lives! also – more of us than them! also – what we need now is shovels, wells, and barricades!
    労働、そこから生み出された富を直接享受できない私たちは不安定な生活を強いられる。その生活をぶち壊したいが、結局かろうじてのところでしがみついている。我々に今必要なのは、ショベルと井戸とバリケードだ。
    ANTHEM FOR NO STATE – kanada, emptied of its minerals and dirty oil. emptied of its trees and water. a crippled thing, drowning in a puddle, covered in ants. the ocean doesn’t give a shit because it knows it’s dying too.
    カナダ、この国は鉱物も薄汚れた石油も底をつき、木々や水も同じく枯渇している。泥の中で溺れ、蟻で覆われる。母なる海も全てがどうでもよくなっている、なぜなら海も同じく死に行く運命であることを知っているから。

こういった内容を踏まえてアルバム冒頭を飾るUndoing a Luciferian Towersを聞いてみると、確かに憤りや批判を込めた感情も感じられるのですが、それにしても音の中にひとひらの光を感じずにはいられません。

これまでの彼らの音楽はひたすらに暗く、怒りと反抗の精神をブレンドしたものが多かったのですが、本作はそういった感情の中にも希望を感じさせるのです。

先の見えない暗闇の中を戦い続けてきたバンドが見出した一筋の光なのか、あるいは私のただの思い過ごしなのか。

その真相は謎のままですが、この音が示すような希望の光を実際の社会にも見出せるようになることを、Luciferian Towersを聞いていると強く願ってしまいます。

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