【レビュー】Hot Thoughts by Spoon

アメリカのインディシーンで最前線を走っているSpoonが今年3月にリリースしたHot Thoughtsを取り上げたいと思います。

Hot Thoughts発売後のSpoonのライブに参加した際の様子も綴っていますので、こちらもご覧下さい。

アルバム概要

アーティスト:Spoon
アルバム名:Hot Thoughts
リリース:3/17/2017
トラックリスト:
Hot Thoughts
WhisperI’lllistentohearit
Do I Have to Talk You Into It
First Caress
Pink Up
Can I Sit Next to You
I Ain’t the One
Tear It Down
Shotgun
Us




Spoonってどんなバンド?

Spoonはアメリカにいるとラジオで新曲が頻繁に取り上げられていたり、新譜がレコードストアの特等席(棚)に鎮座していたりと、そのインディ界における知名度の高さを感じます。
しかし、日本にいた頃はこのSpoonというバンドを知っている人はほとんどいなかったので、彼らの歴史を簡単にご紹介したいと思います。


↑右から2番目のボーカル/ギターのブリットダニエルがほとんどの作詞作曲を行っています。

このバンド、最近リリースされたアルバムは軒並みチャートの上位へ食い込むヒットを見せていますが、実はここまで来るのに相当な苦労をしています。
バンドの結成は1993年にまでさかのぼります。ファーストアルバムは1996年に発表され順風満帆なバンド活動が続くかと思われましたが、突然レーベルから放り出されることになります。
いきなりバンドとしての居場所を失ったSpoonは、年間$7,000(約70万円)ほどの収入でなんとか生活を送っていたようです。この頃を振り返ったメンバーも、どうやって生活していたのか分からないようなどん底だったと語っている模様。

そんな状況でも決してバンド活動を諦めなかったのがSpoonのすごいところ。
マージレコーズとの契約にこぎつけた彼らは、2001年にGirls Can Tellというアルバムをリリースします。ここでメディアの注目を少しずつ集め出したSpoonは2002年にアルバムKill the Moonlightでさらにバンドの認知度を強固なものとします。このアルバムからのシングル‪The Way We Get By‬はキャッチーなメロディと力の抜けた演奏で一気にリスナーの人気を得ていきました。

2005年にリリースされたアルバムGimme Fictionで初チャートインを果たした後は、2007年発表のアルバムGaGaGaGaGaを全米チャート10位に送り込み、その後はアルバムを発売するたびに音楽チャートを賑わす存在になっていきました。

キャリア20年以上のこのバンドが途中どん底を経験しながらも、確実にSpoonらしい音楽を作り続けて不死鳥のように蘇った。その事実がこのバンドの持つ魅力がどれほど素晴らしいものかを物語っています。

2017年リリースのHot Thoughts

アルバムからのファーストシングルであり、アルバムタイトルにもなっているHot Thoughtsはアルバムの中でもとっつきやすいメロディとリフでSpoonの音楽シーンへの帰還を印象付けるものでした。
その後アルバムから先行カットされたCan I Sit Next to YouやI Ain’t the Oneといった楽曲も比較的すっと入ってくるメロディを持っています。

しかし、彼らの曲は比較的地味で一度聞いただけではなかなかその真の魅力に気付けないのではないかと思います。
というのも、このSpoonはインディ界のトップに君臨しているとよく言われますが、彼らのアルバムを聞いてみるとメインストリームではなくあくまでインディと言われるのに納得できる、何度も耳を傾けることでその本当のよさが分かるものばかり。
彼らの音楽はいってみれば頑固な職人が人知れぬ里で生み出した「いぶしぎん」といって良いようなものたちばかり。

私も購入してしばらくは先行カットの曲ばかりが耳についていましたが、最近はむしろその他の曲の持ち味も分かってきて、アルバムトータルで非常に気に入っています。
彼らの魅力は緻密に設計された楽曲作り。ギター、ベース、ドラムという基本楽器に加え、キーボードがふんだんに使われています。アップテンポの曲ではキーボードで演奏の隙間を埋めて楽曲として強固なリズムが刻めるよう、バラードではキーボードだけの隙間だらけの演奏を聞かせて音楽に奥行きを持たせられるよう作曲がされているんだなと、特にヘッドフォンで聞いているとハッと気付かされる瞬間があります。
そして、ボーカル ダニエルが少し声を張り上げるとディストーションのかかったような声になりますが、その声がアップテンポの曲ではクールさを添えてくれて、バラードでは切なさを増してくれて本当に楽曲とマッチしてるなと気付かされるんです。

ここでご紹介できる音源が見つかりませんでしたが、Pink UpやUsといった楽器演奏主体の実験的な曲が実はかなりのスルメ曲だったりします。
まずは先ほど動画でもご紹介した曲たちを聞いていただき、それらが気に入ったらアルバムを手に取っていただきたいと思います。
もし最初の何回かピンとこない曲があっても、あるときにふとその曲の魅力に気付かされ、次第にその曲が聞きたくて仕方なくなる瞬間が来ると思います。
そうなったらあなたはどんどんSpoonというバンドの魅力にのめり込んでいくことでしょう。

過去の彼らの作品も粒ぞろいでハズレがありませんので、ぜひあわせてチェックしてみてください。

 

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1 件のコメント

  1. ピンバック: 【ライブレポ 】Spoon / Live at The Chance Theater | Pom's Records

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